パートナー企業 vol.2 三井不動産㈱:村上 弘 法人営業推進グループ/グループ長

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イノベーションを志ざす全ての企業人に捧ぐ!

「パートナー企業」ゼロイチインタビュー

 

企業内イノベーション領域をリードするゼロイチ・パートナー企業。国内でも先進的な視野・思想を持ち、いち早く『チーム・ゼロイチ』を導入した企業たちは、何を考え、どのような挑戦をしようとしているのか? 

三井不動産㈱:村上 弘 ビルディング本部/法人営業統括部/法人営業推進グループ/グループ長

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三井不動産 株式会社
日本初の超高層ビル「霞が関ビル」竣工、日本初の本格的アウトレットモール「三井アウトレットパーク」開業、日本初のJリート「日本ビルファンド投資法人」設立など……、レガシーな不動産業界の中でもひときわ多くの新規事業を生み出してきた大手不動産企業がある。なぜ三井不動産では新規事業が生まれ続けて来たのか? そしてこれからどこに向かうのか? 今回は、そんな三井不動産:ビルディング本部で新たな挑戦部門を率いる、村上弘グループ長の思考・思想に迫ります。 (インタビュアー:『チーム・ゼロイチ』CEO:赤木優理)



 

(村上弘=村、赤木優理=赤)

赤:まずは、村上さんの日々の仕事、法人営業推進グループについて教えて下さい。

 

村:ご存知のように不動産業界はレッドオーシャンど真ん中ですよね。そんな中、我々は3つの生き残り策があると考えています。1つ目は“海外進出”、2つ目はレッドオーシャンの中でも圧倒的に競争力で打ち勝つための“新たな商品・サービスの開発”、3つ目は金融✕不動産でJリートが生まれたように従来の既存事業にとらわれない“新市場”をうみだすこと。そんな3つの中で、私が所属する部署では2つ目と3つ目の可能性をカタチにすることが求められています。

 

赤:具体的にはどういったことですか?

 

村:2つ目に関しては、オフィステナントさまの本業支援に繋がるサポートを提供するというものです。テナントさまの本業や取り組みたい新規事業に対して、三井不動産が持つリソースを組み合わせたりハブとなることで「三井不動産のビルに入居したら儲かる」という状況をテナントリレーション強化の一環として創りだすことです。

 

赤:なるほど、3つ目は?

 

村:新規事業の可能性を探るために、様々な可能性を感じるベンチャー企業などに出資して本業とのコラボ策を模索しています。例えばクラウド型監視カメラやエネルギーなど従来とは全く異なるビジネスに出資して新たな市場を創造できるか、現場レベルで一緒に汗をかきながら日々考えています。

赤:お聞きしていると、結構挑戦的なことをされていて、だからこそ過去に様々な“日本初”といった新規事業を生み出して来られたのだなと改めて感じました。三井不動産は昔から新規事業に貪欲だったのですか?

 



第一章:経営層世代がイケイケで、中堅若手が慎重派?

村:三井不動産の前身は三井合名会社(現、三井物産)の不動産部門で、三井系企業の持っている不動産資産の管理や開発を行う部署でした。それが昭和16年に分離独立して三井不動産という会社になるのですが、戦中戦後の混乱や財閥解体などもあり、都心の一等地に土地を沢山持つ  “大家業的な不動産会社”としてではなく、何か新しい事を色々しないと成長できない。そんなスタートだったのです。

 

赤:へー、不動産会社というより“資産管理会社”に近かったのですね。

 

村:ですので、成長するためには、常に時代の変化に応じて新しいことに挑戦する歴史でした。例えば、限られた都心立地を最大限活用するために日本初の超高層ビル「霞が関ビル」を造ったり、老朽化したレジャー施設を再生して郊外型ショッピングセンター「ららぽーと」を開発したり、埋め立て地の有効活用として「東京ディズニーランド」を開発したり……、そんな感じでずーっと走ってきたDNAがあるんです。

 

赤:なるほど。じゃあ社内的には新規事業なんかにもドンドン挑戦してきた人が多いんですね?

 

村:50〜60歳代の我々より上の世代=今の“役員世代の人たち”は、やらざるを得ない状況もありドンドン新規事業をやってきました。逆に、一定の世代から下は会社が大きくなってから入社しているので、大企業というシステムの中で育ってきている。また、昔は若手にもかなり権限が与えられていて、色々な挑戦が自由に出来たんですが、バブル崩壊で当社も存亡の危機まで陥ったので、そこからはすごく保守的になりました。もう失敗できないと。

 

赤:ですが、バブル崩壊後も新規事業に色々挑戦しているイメージあるんですけど。Jリートなんかはリーマンショックの少し前くらいですよね?

 

村:確かに新たな事業創造には結構挑戦しています。ですが、バブル崩壊以降は若手が自発的に下から積み上げでやるというより、むしろ“トップダウン”で下りてくるケースの方が多い。そういう意味で、我々より下の世代はあまり新規事業に慣れてないんです。経営層から「やれっ!」と言われても「えっ? 何していいか分かりません」となってしまう。

 

赤:なるほど〜。結構そういう会社多い気がしますね。

 

村:今はまだ事業創造の経験が豊富な経営層が顕在ですが、今後のことを考えると「このままではまずいな!」と。ここ数年は社内での新事業への理解も高まってきましたが、三井不動産の挑戦し続けてきたDNAをもう一回我々から下の若い世代が取り戻さなくては……と考えています。

 

 

第二章:具体的な第一歩は、“アイディア” ではなく “仲間” から?

赤:まさに村上さんの部署は新規事業を生みだすことが求められていると思うのですが、ご自身を含めて新規事業の経験が少ない世代として何を意識されていますか?

 

村:自分も含めて、とにかく「社外に出よう!」と言い続けています。三井不動産の社員は、すごく家族的というか仲が良いんです。社員どうしで、しょっちゅう色々な部署の人間と飲みに行ったりしている。そういう意味では良い会社なんですが、一方で“村”に閉じこもる傾向がなくはない。最初は無理やりにでも、とにかく社外に出ることです。会社の看板を外して他流試合を行えば、自分たちが全然イケてなかった部分が見えてくると思うんです。

 

赤:実際に現場ではどうですか? 社員の方は積極的に社外に出るようになりましたか?

 

村:なかなか上手くいかないですよね〜(笑)。知らない人と新しいことをやるって、ある意味慣れが必要なのですが、経験不足で尻ごみをしてしまう。そういう意味では『チーム・ゼロイチ』のワークショップは非常に効果的だと考えています。社外の人とチーム結成して、実際にプロジェクトを立ち上げていく体験がスムーズに練習できる。我々だけでは埋められない“理想と現実のギャップ”を見事にフォローしてくれています。

 

赤:実は事業創造にも同じようなことがあって、『チーム・ゼロイチ』に参加されている方々も、結構初期の頃は「事業アイディアの洗練度」を重視されている。つまり、設計図や道筋が明確でないことが“弱み”なんだと思われてるんですね。でもね、アイディアの完成度にゴールはないでしょ? だからどこまで行っても“弱み”が解消されずに、結局一歩も事業創造に踏み出さないというケースが多いんです。

 

村:確かに、うちの社員も学歴の高い人が多くて、頭がいいので直ぐにこれは上手くいかないんじゃないかって判断しちゃう。リスクを考えてしまうというか……。

 

赤:そんな頭の良い会社員が、リスクがあっても「実際に一歩踏み出してみようぜ!」となるのは「アイディア」ではなく、やっぱり「人」なんですね。“仲間”や“師匠”と出会うことが重要なんです。我々のプログラムでは「スカウト交流会」という半ば強制的にチーム結成をさせるクラスがあるんですが、アイディア自体は“フワッ”としてるのに、凄い意気投合しあえる仲間が社外に何人か出来たりすると、急にテンションが上って動き出すというケースが沢山あります。

 

村: 確かに、受講させて頂いている社員の中でもチーム結成できた人はアクションの質が変わってきてます。無理にでも仲間が見つかる環境を用意してあげるのもマネージャーの役目かもしれません。

 

 

第三章:村上氏が構想する「ミドルシニア・パイオニア活用」とは?

赤:今までは、マネージャーとしての目線でお話を伺って来ましたが、村上さん自身の「やりたい事」を伺ってもいいですか?

 

村:私はいわゆるバブル期の入社なんですが、我々の同期は例年の3倍くらいいるんです。人数が沢山いる分、様々なタイプの優秀な人材がいるのですが、社内のポストには限界がある。この問題を新規事業を絡めて解決できないかと考えています。

 

赤:ほぅ! どういうことでしょう?

 

村:私は以前4年ほど人事部にいたことがあり、個々人がもつ高い能力を社内で上手く活かしきれていないケースがあることを知りました。従来の事業を前提として効率化された組織では彼らの能力を活かせる領域が限定的なんですね。「◯◯✕不動産」という新領域や、ゼロから事業を大きくしていくフェーズなど、今までと違う分野で活躍できる場を会社としても沢山用意できれば良いし、自分でも飛び込んでみたいと考えています。

 

赤:出資したベンチャー企業と二人三脚で「◯◯✕不動産」の可能性を探るという話ですか?

 

村:はい、例えば ㈱クリューシステムズというクラウド型監視カメラを手掛けるベンチャー企業に当社は出資をしているのですが、そこに副社長として出向している僕の同期は、いまそこで資金調達や販路拡大などまさに“経営層”として頑張っています。まだ信用力が低いベンチャーでのそういった経験は、絶対に“三井不動産社内”では用意できない訳です。

 

赤:なるほど、ベンチャーには大手企業社内では用意できない活躍領域が相当あると。

 

村:ベンチャー協業もそうですし、三井不動産社員が自ら「◯◯✕不動産」の新ビジネスをおこして、会社に出資させる可能性もありだと思っています。例えば三菱商事では、社内ベンチャーを立ち上げて独立させますよね? 「スープストック」みたいな事業が生まれている。個人的にはそういう仕組みを三井不動産にも根付かせたいと考えています。何にしてもそういった事例に沢山トライすることで高い能力を活かした人材活用ができると考えていますし、私も現在46歳なんで、定年まであと14年あります。14年もあればゼロから事業を生みだすことも十分可能だと思うんですよね(笑)。

 

赤:三井不動産の“新規事業DNA”を中堅若手が受け継ぐためにも……ですね?


村:現在、我々の部署の存在意義とは「未来の三井不動産のカタチを作り上げる先鋭部隊」だと考えています。その為には中堅若手が一丸となって、イノベーターとしての“個々の戦闘力”を上げていく必要がある。『チーム・ゼロイチ』はトレーニングだけでなく、実際の事業創造や、新たなネットワーク作りという一石三鳥的なメリットがありますよね。それを上手く活用したいと考えています。

 

赤:ありがとうございました。

 

 

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