パートナー企業 vol.3 ㈱リクルートキャリア:上田 隆志 アントレユニット/部長

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イノベーションを志ざす全ての企業人に捧ぐ!

「パートナー企業」ゼロイチインタビュー

 

企業内イノベーション領域をリードするゼロイチ・パートナー企業。国内でも先進的な視野・思想を持ち、いち早く『チーム・ゼロイチ』を導入した企業たちは、何を考え、どのような挑戦をしようとしているのか? 

㈱リクルートキャリア:上田 隆志 中途事業本部/領域企画統括部/アントレユニット/部長

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株式会社リクルートキャリア
転職や就職サポート事業を数々展開するリクルートキャリアの中で、「独立開業」という異色のサービスを展開するアントレユニット。40・50代の脱サラ世代をメインターゲットに据え、フランチャイズという切り口でメディア事業を展開。フランチャイズ系広告マーケットでは他の追随を許さないほど圧倒的なシェアを誇る。そんな社内でも異色の独自路線を走り続けてきた部署が、直近3年間を新たな事業領域を開拓する期間と定め、様々な挑戦を行っている。今回は、そんな異色集団:アントレユニットを率いる、上田隆志 部長の思考・思想に迫ります。     (インタビュアー:『チーム・ゼロイチ』CEO:赤木優理)



 

(上田隆志=上、赤木優理=赤)

赤:まずは、アントレユニットが新規事業開拓に注力するようになったいきさつを教えて下さい。

 

上:そもそも『アントレ』「誰でもどんな人でも、意志があれば独立できる!」という世界に少しでも近づけるためのお手伝いとして始まったメディア事業です。ターゲットは、サラリーマンをずっとやってきて、でもこのままで本当にいいのか悩みを抱えているようなごく一般的な方々。今まで事業創造なんかを考えてこなかったような方でもフランチャイズ代理店のような、ある程度出来上がったビジネスパッケージを活用することで独立開業できるような世界を提供するのが目的です。

 

赤:これからの3年間で、どういった新規事業を模索されているのですか?

 

上:フランチャイズ領域はあらかた網羅できたのですが、創刊当時の「誰でもどんな人でも、意志があれば独立できる!」を実現するためには、フランチャイズ以外の独立を望まれているサラリーマンの方々に向けて、だったらこういうやり方ありますよ……とか、こういうサービスありますよ……と広く提示できるような存在に我々自身がなっていく必要があると考えています。

 

赤:なるほど、まだまだ空白地帯があるということですね。実際には社内でどんな取組みをされて来たのですか?

 

上:まず手を付けたのは、フランチャイズ以外で実際に独立した人たちのナマの声を、各社員たちがインプットすることでした。幸い、リクルートという会社からは過去に様々なタイプの起業家が誕生しているので、独立した先輩たちに定期的に話を聞きに行く所から始めました。もともと業務としてフランチャイズで独立した方への取材はやっていたので、インタビュー自体にはそれほど手こずる感じはなかったですね。

 

赤:日常業務でやっている所から始めさせるのは良いアイディアですね。逆に、社員の方が手こずっていたのはどういう部分ですか?

 

上:ターゲットニーズは色々集まったので、次はそれを解決する新事業アイディアを「見よう見まねでやってみよう」のフェーズに挑戦させたのですが、そこが凄く難しかったです。

 

 

第一章:ターゲットの声を沢山集めても、事業ネタは決まらない?

赤:「見よう見まねでやってみる」とは具体的にどういったことをしたのですか?

 

上:社員どうしで5人一組のチームをつくり、各チームでテーマを好きに決めて、更にターゲットにヒアリングを行ったり専門家の方に話を聞きにいったりしながら、半年かけてサービスアイディアを練るというものです。例えば、農業で脱サラした人や、主婦が起業するケースなどのサポートビジネスを考えるという感じですね。

 

赤:なにが難しかったですか?

 

上:ゼロから事業を創った経験が殆どの社員にないので、チーム内でずっと議論が回遊するケースが非常に多かった。ある程度まで仮説が作れても「そもそもそれで良かったんだっけ?」という一言でゼロに戻る。このサイクルが半年間で何十周と繰り返されるという感じです。テーマ設定は悪くなさそうなんだけど、進め方が分からなくて誰もチームを引っ張れない。最後は締め切りがあるので強引にまとめて敗れ去るというチームが結構ありました。

 

赤:よくあるケースですね。新規事業において、フィールド調査やユーザーヒアリングが重要なのは間違いないのですが、そこで集めた膨大な情報の中で、どの部分が大事なのか?どの課題でユーザーは本当に困っているのか? が分からなくなる。

 

上:この問題は、まだ私の中でも消化しきれていないのですが、赤木さんならどういったソリューションがあると思われますか?

 

赤:私は「起業家と会社員の違い」を研究していますが、起業家が自分自身の経験や過去の体験から事業ネタを探すのに対し、会社員の方はマーケットやら他人の課題感から事業ネタを探すケースが多いと感じています。これは起業家が強いコンプレックスを抱えている人が多いのに対し、会社員はそうでない人が多いからだと考えていますが、先程の社内で上手くいかないケースも、ターゲットの課題はリサーチで分かったものの、結局他人ごとなので課題感の強弱が判断できない。従って「本当にこれで大丈夫?」と聞かれると確信が持てなくなってしまうんだと思います。

 

上:なるほど、確かにそういう側面はあると思います。具体的にどうすれば解消できるでしょうか?

 

赤:ソリューションは2つあると考えています。1つ目は、ターゲットの問題を本人並に説明できるくらいにヒアリングしまくって自分ごと化するやり方。でもこれはヒアリング力が相当高くないと難しい。2つ目は、自分自身の問題を事業ネタにすること。これも自分の過去のコンプレックス・問題を言語化できていないケースが多いので初めは難しいのですが、そこさえクリアーすれば後は自分の感覚で判断ができるし、何より自分が本当に欲しいサービスを作ればいいので方向性が見えやすい。我々『チーム・ゼロイチ』はコチラのやり方を推奨しています。

 

 

第二章:普通の会社員から “クレイジー” な事業は生まれるのか?

上:先ほど、「会社員は起業家に比べて強いコンプレックスを抱えている人が少ない」というお話がありましたが、赤木さんは普通の会社員から世界を変えるようなクレイジーな事業が生まれると思いますか?

 

赤:難しい質問ですね……。優秀な起業家たちを見ていると、やはり過去に強いコンプレックスがあって、それを執念深く覚えていて「何くそ、絶対見返してやりたい!」というのが根底にある人が多い。見返すためには、普通のルートではなく人と違う道を行かないとダメだ! と日頃から意識している、その結果、人と違う道を楽しむように自然とマインドセットされて起業を選択するんだと思います。でも普通の人は、コンプレックスをそんなに執念深く覚えていない。コンプレックスは比較的辛い体験だったりしますからね。人間は普通、辛い過去は忘れるように設計されている。

 

上:分かります。アントレユニットの社員たちも真面目に仕事に取り組む人間が多いので、新規事業を創らせたら、はじめは失敗してたとしても60点くらいのサービスは創れるような感覚がある。なんですが、やっぱり「努力してる人」「夢中でやってる人」の間には大きな壁があって、世の中を大きく変えられるようなサービスは「夢中でやってる人」からしか生まれないような気がしているんです。

 

赤:確かに、ごく普通の正常な方々は、多くの人が選ぶ正規ルートを選択しがち。そりゃ、人と違うことして失敗したくないですからね。でも、そういった人たちが起業家と同じように強いコンプレックスを抱えないとダメかっていうとそんな事ないと思います。 そんな事したら精神的にもキツくなる人が増えるでしょうし、変な人ばかりになってしまう(笑)。

 

上:なるほど、ごく一般的な会社員がクレイジーな事業の創るには、会社員なりの起業家とは異なる方法があるのではないか……ということでしょうか?

 

 

第三章:会社員が “クレイジー” な新規事業を創るには? 意識する2つのキーワードとは?

赤:起業家のように執念深くコンプレックスを意識していなかったとしても、問題意識や過去のトラウマを全く持ってない人はいませんよね。忙しい日々に追われて忘れているだけ。実はそんな一般的な人々でも、まとまった時間や思い出すきっかけさえあればドバっと自分の想いが溢れることがあります。

 

上:それは当社でも心当たりがあって、年に1・2回、箱根に社員全員で行って合宿的なものをやるんです。誰かの個人的想いをベースにみんなで意見を言い合うんですが、ほっといても無限にしゃべっている(笑)。不思議なことに、参加するまでは特に明確な主張がなかった人も触発されるのか、話しはじめたりして盛り上がるんですよね。

 

赤:でも会社に戻ると何事もなかったような日常にもどりませんか?

 

上:そうなんです。僕も色々トライしていて、人事評価の20%くらいで、合宿で見つけた個人ミッションを目標設定にしたりするんですけど、それでスイッチが入ったのをあまり見たことがない。「夢中でやってる」感じにはならない。

 

赤:私は、キーワードは “仲間”“フィードバック” だと考えています。起業家は個々のコンプレックスが強いので独りで勝手に「夢中になる」んですが、会社員の方々は共感しあえる “仲間” と盛り上がり、自分たちの挑戦が確かに社会から求められているという “フィードバック”(=実感値)がないと迷いが生じて夢中になれなくなると考えています。

 

上:確かに「自分の挑戦が社会から求められている」という実感を社員が感じられるようなフィードバック=評価軸を社内に整備する必要がありそうですね。単純に会社が一方的に「よくやった」と評価するだけではダメな気がします。

 

赤:例えば、アメリカのゴア社という企業では、新規事業に対するフィードバック軸として何人の社員がコアメンバーとして自主的に関わっているかを評価する仕組みがあります。彼らは世界を変えるような新サービスはすぐに収益が生まれるようなものではないから収益で判断するのを止め、その代わり、どれだけ多くの人が熱狂してプロジェクトに関わっているかで判断しましょう……をルール化しているんですね。

 

上:なるほど、そういう評価軸もあるんですね。それ面白いな! コアメンバーであれ、ユーザーであれ、沢山の人が熱狂するサービスには社会的価値がある。社会から求められている実感値は確かに感じられますね。

 

赤:我々『チーム・ゼロイチ』は、 “社外のイノベーション培養室” を謳っていますが、やっぱり社外だけでは限界もある。 “社内” と “社外” が上手く連携しながらイノベーションを生み出していくエコシステムを構築する必要があると考えています。その為には、社内の評価軸提案も含めて、パートナー企業さまには相乗連携の形を色々ご提案させて頂くつもりです。

 

上:実はアントレユニットは会社の中でも一・二を争う自由な部署になってまして、新規事業への評価なんかも割りかし色々設定できるんです。そういう意味では “会社の中の実験室” 的な立ち位置ができるなと考えてます。アントレ実験室で成功事例が1つでもできれば、組織全体へのインストールも現実味が出てくるし、それも含めて我々の役目かなと勝手に思っています(笑)。

 

赤:お互い頑張りましょう! 今後がますます楽しみになりました。

 

 

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