パートナー企業 vol.1-① 日本ユニシス㈱:平岡 昭良 代表取締役専務執行役員CMO

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イノベーションを志ざす全ての企業人に捧ぐ!

「パートナー企業」ゼロイチインタビュー

 

企業内イノベーション領域をリードするゼロイチ・パートナー企業。国内でも先進的な視野・思想を持ち、いち早く『チーム・ゼロイチ』を導入した企業たちは、何を考え、どのような挑戦をしようとしているのか? 

日本ユニシス㈱:平岡 昭良 代表取締役 専務執行役員/CMO

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日本ユニシス株式会社
創業57年の歴史、受託型システムインテグレーター(SIer)、東証一部上場企業、……と堅苦しそうなキーワードが並ぶ企業がいま注目を集めている。それは、どこの企業でも待ったなしの課題である“社内イノベーション”に貪欲に取り組んで来た姿勢&事例が評価されつつあるからだ。今回は、そんな日本ユニシスでの社内変革請負人:平岡専務の思考・思想に迫る。 (インタビュアー:「チーム・ゼロイチ」CWO:木下紫乃)


 

(平岡昭良=平、木下紫乃=紫)

紫:まずは、平岡専務が日本ユニシスの社内変革の文脈でどういったことに取り組んで来られたのかを教えて下さい。

 

平:2001年、アメリカでドットコムバブルだった頃に社内向けに1つのレポートを提出しました。それは「SIerは路頭に迷う!」という内容でした。

 

紫:14年も前ですね。当時は御社にとってもSIerが主力サービスだったはずでは?

 

平:その頃の日本でのIT技術の使われ方は、クライアントが「こういう業務をやっているので、この部分を効率化できるようにITを使いたい……」というように“業務の効率化”が目的でした。クライアントから要求仕様が出て、それにSIerが応えるというサイクルがメインだったのですが、一方アメリカではドットコムバブルがはじけ殆どのIT企業が潰れるなか、生き残ったのはIT技術を使い、“競争優位”だとか“新たなビジネスモデル”を構築している新興勢力だったのです。

 

紫:求められるIT技術の潮目が変わったと……。

 

平:そうです。これからはクライアントの“競争優位構築”や“新ビジネスモデル構築”にIT技術を使いたい企業が増えるだろうと考えました。ですが、この領域はクライアント自身も手探り状態でした。そのためどういった要求を出せばよいかがクライアント自身にも分からない。そういう意味で、路頭に迷うなんて話をしながら、社内で色々な施策を行ってきました。

 

第一章:今までにない概念で「エコシステム」を創れる人財がカギ!

平:まず着手したのは「ビジネスアグリゲーション部」の新設です。2001年〜2002年の頃ですが、これの意図はビジネスを横断的につなげ、業界の壁を越えた発想でIT技術を提案できる人財の育成が必要との想いからでした。それまではクライアント毎に担当がつき、業界のルールや各クライアントの特殊事情などには精通していたものの、業界を越えた発想やビジネスどうしを組み合わせるといった目線で物事を考えられるSIerが殆どいませんでした。勝手に社内インターンさせて、「多業界のを勉強しろ」という、殆ど放置プレーでしたが……(笑)。

 

紫:業界・業種別にそれぞれの秩序があった時代は終わったと……。まさにAmazonやGoogleの世界ですね。

 

平:その通りです。ですが、「ビジネスアグリゲーション部」はたったの9ヶ月で閉じました。

 

紫:えっ!! どうしてですか?

 

平:そこには大手企業の色々な問題が絡んでいるのでひと言で説明できないのですが、一つにはビジネスを横断的に繋げるだけではダメだったことがあります。例えばAmazonの例だと、彼らはeコマースをやっただけでなく、物流だとか決済だとか、あるいは本の読み方自体も変えてしまいましたよね。もはや繋げるに留まらない「エコシステム」を創りあげているのです。そういった独自の新しいコンセプトに基づく「エコシステム」を発想できないと、そもそも“競争優位”や“新ビジネスモデル”にIT技術の活用を提案するなんてことはできないと気付いたのです。

 

紫:なるほど、従来のバリューチェーンを繋げるのではなく、独自の概念で「エコシステム」を提案することが最も重要だと気づかれたわけですね。

 

平:ですので、まず初めに全く違う概念で新規事業を立ち上げて、その次に新規事業に必要なあるいはそのエコシステムの競争優位となるようなサービスを見つけてきて、最後にそれらを繋ぎ合わせる順序で発想しないといけない。まず繋ぎ合わせる所から始めても「エコシステム」は生み出せないと気付きました。そこで、そういう独自の新エコシステムを発想できる人財を育てる「プリンシパルプロジェクト」を先に始める必要があると考えました。

 

紫:「プリンシパルプロジェクト」とはどういったものですか?

 

平:“Principal”は「先頭に立つ」という意味ですが、バレエの世界などでも主役を意味します。「君が主役だよ」と、新たな発想で新しいビジネスを主体的に実行できる人材の育成を目標にしたプロジェクトでした。当初は制度というほどキチンとしたものではないスタートでしたが、現在は、人材育成部門が推進してくれており、ICTを色々使い倒して「エコシステム」を発想していく、ICTを活用した新規事業を実際に生み出していくことを訓練する人財育成プログラム「NEXTプリンシパル制度」となっています。

 

 

第二章:本業以外でのハードワークが鍵! 平岡流 人財育成術とは?

平:人財育成プログラムといっても、どこかの研修会社に「ハイお願い」と外注する訳ではなく、私塾的に私自身が手探りで色々試しながらやってきました。若手対象に、エリック・リース氏の「リーンスタートアップ」など週に5冊以上本を読ませたり、当時まだ日本ではめずらしかった「ビジネスモデルキャンパス」を活用して、三ヶ月でビジネス構想を練らせるような実業の中で鍛えさせる感じでした。

 

紫:なんかゲリラ戦って感じですね。『チーム・ゼロイチ』でも実際に会社員に起業家体験させる中で実践的に身につけさせることを重視しています。手取り足取りし過ぎるとお客さまになってしまう。少々荒っぽくても、仲間たちと一緒に試練を乗り越える方が、まさに“体得”というものを生みだすと考えています。

 

平:確かにあの頃インターンさせていた社員やプリンシパルを経験した社員らは、今もいい意味で癖があるんです。そういった人財が社内に少しずつ増えてくると徐々に社内で色々なことに挑戦できる雰囲気が生まれてきます。2011年からは毎週土曜日に現場の幹部を集めて勉強会なんかもやりました。三枝先生の「V字回復の経営」を読み、自社で本の内容を実行するための施策を皆で考えるというような内容です。

 

紫:最近だと、どこの企業もにわか社内イノベーションなんですが、やはり長年、トップや役員自身が汗を流しながら少しずつ社内の人材に影響を与え続ける努力があってこその賜物なんだと改めて感じました。

 

「保育園を何とかしたい!」チャイリーフスペース

平:プリンシパル3期生の社員で「保育園を何とかしたい!」って始めた4名のチームがあったのですが、彼らの構想は活動期間の3ヶ月間ではうまく行かなかったのですが、その後ずっと諦めないで活動を続けて、この7月から3年越しで、会社の事業「チャイリーフスペース」として取り組んでみることになりました。3ヶ月間の活動期間が終われば誰も応援してくれないし、上司に話したり隠れたりしながら現業と並行してやってきた訳です。こういう実例がようやく最近出てきたという感じですね。普通に10年以上かかりました。

 

紫:実は『チーム・ゼロイチ』では会社員の起業家体験の先に、実際に彼らが社外で創りあげたビジネスを社内に新規事業として戻すということをやろうと考えています。まさに日本ユニシスさんの「保育園チーム」のようなことを生み出そうと考えているのですが、その時にネックになるのが役員クラスの判断です。意思決定権をもつ人たちが理解するためには相当なエビデンスが必要で、そのエビデンス内容も売上規模どれくらいですか? といった話になってしまう。社内で理解させる所が非常に難しいと考えています。

 

平:実は今、それが一番の悩みなのですが、既存の本業と新規事業とを同じ基準で判断するというのがそもそもナンセンスなのですが、それを解決するためには新規事業だけ別枠で考えても上手くいかない。結局、会社全体の文脈をイノベーションに沿うように変えていく必要があるのです。「経営/マネジメントのイノベーション」が急務だと考えています。

 

 

第二回に続く……)

第三章:これからは経営/マネジメントの変革! 役員に課せられた仕事とは?

第四章:既存事業と新規事業で担当部署を分けると失敗する?

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