パートナー企業 vol.1-② 日本ユニシス㈱:平岡 昭良 代表取締役専務執行役員CMO

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イノベーションを志ざす全ての企業人に捧ぐ!

「パートナー企業」ゼロイチインタビュー

 

企業内イノベーション領域をリードするゼロイチ・パートナー企業。国内でも先進的な視野・思想を持ち、いち早く『チーム・ゼロイチ』を導入した企業たちは、何を考え、どのような挑戦をしようとしているのか? 

日本ユニシス㈱:平岡 昭良 代表取締役 専務執行役員/CMO

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日本ユニシス株式会社

創業57年の歴史、受託型システムインテグレーター(SIer)、東証一部上場企業、……と堅苦しそうなキーワードが並ぶ企業がいま注目を集めている。それは、どこの企業でも待ったなしの課題である“社内イノベーション”に貪欲に取り組んで来た姿勢&事例が評価されつつあるからだ。今回は、そんな日本ユニシスでの社内変革請負人:平岡専務の思考・思想に迫る。 (インタビュアー:「チーム・ゼロイチ」CWO:木下紫乃)



 

(平岡昭良=平、木下紫乃=紫)
紫:前回は、現在に至る、社内イノベーションを促進するための様々な日本ユニシスでの施策を、平岡専務の思想をもとに紐解いて頂きました。いよいよ今回は、日本ユニシスのこれからについて平岡専務の挑戦を伺いたいと思います。前回の最後で今の一番の悩みは「経営/マネジメントのイノベーション」という話が出てきましたが、具体的にどういったことなんでしょうか?

 

平:例えば”基礎研究”って概念がありますよね。商品開発に至る基礎技術の研究です。大手企業の中でもこの基礎研究部門を自社で持っている企業はそんなに多くはないのですが、イノベーションにはこの基礎研究の概念が非常にしっくりくると考えています。

 

紫:なるほど、あるアイディアを持ち込んだ時に、それをストレートに「いくらになるのか?」と聞かないためのルールづくりですね。

 

平:日本ユニシスの強みの1つはIT技術企業であるという所です。つまりサービス化してお金を稼ぐ前に、まずIT化しているのですね。サービス化で失敗しても、IT化した技術は残る。それをいったん全て“生け簀(す)”に入れて保管しておき、成果として測り、別のサービスモデルなどでの再活用を検討します。

 

第三章:これからは経営/マネジメントの変革! 役員に課せられた仕事とは?

平:弊社には、充電スタンドをネットワークでつなげようという「smart oasis」という新規プロジェクトがあります。いま国内に設置しているネットワーク対応型の充電スタンド約10,000台のうち、日本ユニシスのシェアは40%程度(=約4,000台)です。ですが、充電スタンド単体でみると、ガソリンスタンドは満タンにすると数千円ですが、電気自動車は満タンにしても数百円で「ビジネス的には儲からないからやめろ」という判断になってしまう。しかし、ネットワークに繋がるということは、認証したり、課金したり、位置情報が把握できたり、いろいろな予約ができたり、また、ビッグデータとして売れたりもします。色々なことができますよね。でもそこは可能性の話だから現状の意思決定システムでは評価できない。それを基礎研究の概念で捉え直すことができれば、そして社内の意思決定要素に盛り込むことができれば新規事業への挑戦はもっと可能性が拡がると考えています。もちろん現在では、「smart oasis」単独の事業としても採算ラインにのっていますが。

 

紫:単なる投資ともひと味ちがう“生け簀モデル”ですね。面白い!

 

平:しかも私たちがもっと面白いのは、色々な業界のトップランナーである様々なクライアント企業からお金を頂いて、チャレンジさせてもらっているという点です。もちろん成果物としての商品・サービスの著作権についてはクライアントと調整する必要があるのですが、そのプロセスで生み出された技術は我々にノウハウが蓄積されていくのです。

 

紫:つまりイノベーションというものと“基礎研究”の評価の相性のよさ“受託ビジネス”を最大限に活用することでのリスクの最小化を社内システムとして構築できるのではないかということですね。

 

平:はい、その“生け簀”に様々なIT技術を蓄積し、でも一番重要なのは「エコシステム」を創造できる人財を増やすということだと思います(前回記事参照)。“基礎研究+生け簀+受託モデル”で新規事業への意思決定ハードルを下げ、新規事業の実践の場を増やし、“ナレッジ体得”の場が増えることでエコシステム創造人財が更に増えるというサイクルを整備するのが経営/マネジメントに必要な変革の1つだと考えています。

 

紫:例えば社内イノベーションの話が出た時に、すぐ形だけパクろうとする会社が多い。でもそういう会社は大体上手くいかない。例えば、社員に「アイディア出せっ」と言ってるのに、自分では何一つアイディアを思いつかないマネージャーがいるじゃないですか。社内イノベーションにおける役員やマネージャーの役割って何なのでしょう?

 

平:「現場で一緒にやる」「チャレンジできる環境をつくる」ってことではないでしょうか。アイディアも一緒に考える。新規事業のジャッジなんてそもそも経験不足で出来ないので、先ずはイチプレイヤーとなって一緒に頭を捻ることから始めればいいと思います。あとは横断的に社内を網羅した視点を持てるのが役員の特権の1つなので、社内の失敗を横断的に共有することも大事です。実際に現場で色々やれば自分も失敗するので、どの失敗情報を共有すべきかも判断がつきやすくなると思います。

 

紫:平岡専務は今まで「現場で一緒にやる」を地で行ってきたと思うのですが、現在も続けておられるのですか?

 

平:相当無理してます(笑)。新しいデバイスがでると誰よりも早く使ってみたりして、社員と情報交換しています。私の部屋はスマートロックになってたり、米国出張では、テレプレゼンスロボットも衝動買いして帰って来たりとか……。

 

紫:すごい(笑)。

 

 

第四章:既存事業と新規事業で担当部署を分けると失敗する?

平:あと、最近はイノベーション領域ばかりがフォーカスされますが、実は旧態依然とした既存事業に対しても相当時間を費やしてきています。例えば営業部長向けのワークショップなんかは、今求められるSIerの営業プロセスをキチンと定義し小冊子までつくって5年もやり続けてきました。昨年からはこちらも、執行役員らに代替わりしてもらっています。

紫:なるほど、既存事業のブラッシュアップの部分もかなり力を入れておられるんですね。

 

平:よく新規事業をやる部隊は評価基準も違うから切り離せ、別組織にしたほうがいいって議論ありますね。でも別組織にして新規事業担当役員を任命した瞬間から“既存ビジネスvs.新規ビジネス”みたいな構造になってしまって、社内政治的な別の文脈でも戦わないといけなくなる。やり方に正解はないのですが、本当に難しいと思います。

 

紫:確かに社内で新規事業を生みだすことだけを考えたら、ハードルが多すぎて嫌になってしまう。私たち『チーム・ゼロイチ』は、“日本の全ての会社員”が自分なりの新事業に挑戦する世界を創りたいと考えています。なので新規事業を創ることだけが目的でなく、そのプロセス自体を楽しんだり、社外の人とチームを組むことで会社内とは違う仲間が見つかったり、イノベーションスキル面での成長実感を得られたりできる仕掛けなどを用意して、社内だけでは難しい部分をどうおぎなえるかを模索し続けています。

 

平:社外でのハードワークを楽しめる『チーム・ゼロイチ』は我々企業人とはアプローチが異なるので非常に面白い! イノベーション的な思考トレーニングは、新規事業領域以外の社員にも必要だと思います。日本ユニシス社内でも組織編成で色々な挑戦をしていて、全社員が既存ビジネス(縦)と新規ビジネス(横)を並行して取り組む構造にしています。(右下画像参照)

 

日本ユニシスの新組織体制

紫:なるほど。これもちょっと珍しい。

 

平:縦軸と横軸のマネジメントを分けると、先程の“既存ビジネスvs.新規ビジネス”のような問題が生まれるので、私がワンマネジメントで全領域を見るようにしました。課題が出ると全て私の所に持ち込んで来る感じですね。

 

紫:現場の社員からすると、変にあっちの意見を立てて、こっちは……的な苦労をしなくてすみますね。平岡専務が大変そうですが(笑)。

 

平:実は2015年4月からはもっと大胆なことに挑戦しています。横軸に現場を支える部署を配置し、現場クライアントさんと接している9ユニットが縦軸2部門に分かれてます。この2部門の部門長をなくしました。私の名前もそこにありません。

 

紫:えっ? じゃあ各ユニットから上がってきた要望の調整や意思決定は誰が行うのですか?

 

平:この変更の意図は、「それぞれのユニット長が連携しあって部門全体のことは決めろ」というメッセージなんです。いつまでも上の判断を仰ぐのではなく、自分たちのことは自分たちで決める。そのために今まで以上に横連携を意識するということです。“参加と自治”ですよね。これをするとユニット長のなかで誰が会議の招集をするのかとか、誰にカリスマ性があるのかとかが見えてくる。色々なものが見えてきて面白いなと思います。

 

紫:でもその反面、意思決定には時間がかかるだろうし、平岡専務から見てもどかしい部分がいっぱいあると思うのですが?

 

平:はい、そこは我慢です。逆にその我慢をしてでも経営/マネジメントのイノベーションとして得ることの方が大きいと考えています。「何を捨てて、何を取るのか?」このメッセージを組織の在り方を通じて全社に伝えていくのも経営/マネジメントの重要な仕事だと思っています。当社では、昨年度、2015年度からの中期三ヵ年計画を立て、全社をあげてイノベーションに取り組んでいくこととしています。現在、少しずつその芽が出だし、私も一緒に大きく成長する努力をしているところです。

紫:なるほど、これからも更に面白くなりそうですね。本日はありがとうございました。



(前回のインタビュー記事はこちら…)
パートナー企業 vol.1-① 日本ユニシス株式会社:平岡 昭良 代表取締役専務執行役員CMO

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